2019年12月24日

ユールタイド・ミスルトゥ

・ハッピーバースディ・ディア・マイ・レディなメリアドールさんお誕生日SS(×クレティアン前提)
・素直になれないふたり




「メリアさん、お届け物です」
 ラムザの手から渡された、小さな小包。
「誰から?」
「さあ、通りすがりの男の人から。名前も顔も知らない人だったけれど、ガリランドの士官学校の出身って言ってたから、僕の先輩だったのかも。覚えてないけど。メリアさんに直接渡して欲しいって頼まれたんだ。受け取りたくなかったら、受け取らなくていいって」
 それはとても軽かく、手紙のようだった。けれど中には手紙は入っていない――緑色の、赤いリボンで根元を結わえた小ぶりな植物飾りをのぞけば。
 所書きもなく、人づてに渡された小さな贈り物。
「何かしら、これ。よくわからないけれど、もらっておくわ。怪しいものではないと思うし」
 おそらく、赤いリボンを見れば、きっと何か優しい気持ちがこめられていると思ったから。
 なぜなら、今日は冬至祭の日だから。人々の間でささやかな贈り物が交わされる日だから。


「メリアドール、何をもらっただ?」
「草」
 アグリアスが訊ねる。
「ふむ、見たことがあるな。白魔道士が杖にその植物を編み込んでいる姿を知っている」
「そう、戦闘用のアクサセリーかしら?」
「いや……冬至祭の飾りなのかもしれない。この季節になると実家にそれを飾りつけていた。あいにく、私はそういった趣向には詳しくなかったが」
「貴族の文化なのね。ラムザは何か知っている?」
「うーん、そういえば、冬至祭の日に同級生たちが配っていたかも。僕も何回かもらったことがあるけど、そういえば魔法の呪具だったのかな」
「じゃあ、ラムザ、あなたがもってたら? 隊で一番魔法を使うのはあなただと思うから」


「あら、それはミスルトゥね。だめよ、そんなに簡単に恋のおまじないを配ってしまっては駄目よ」
 私たちの会話をそれとなく聞いていたらしいレーゼが笑いながら言った。
「ミスルトゥ?」
「恋?」
「まじない?」
 私たちは、三人で同時に、顔を見合わせた。
 この手の話題は、彼女が一番詳しい。
「このミスルトゥは、冬でも枯れない緑の植物ってことで生命力の象徴として扱われるの。だから白魔道士の人が愛用してるわね。でも、この植物にはもっと別の意味で使われることもあるわ――特に、冬至祭の日のミスルトゥはね。恋人のお守りなの。ミスルトゥの下では、女性は男性のキスを拒めないって伝説があるの。だから……ミスルトゥを贈られるってことは……その意味は、わかるわよね?」
「へぇ、素敵な伝説があるんですね……え、ってことはメリアさん、もしかして、プロポーズ?!!」
 のんびりしていたラムザが急に慌て出す。
「そうか、恋人がいたのか、ならば私らに気兼ねすることなく二人で会ってくるといい」
「恋人なんていないから! 違うから! 返してくるわ、こんなもの……」
「あらあらメリアドール、ご機嫌ななめね。いいじゃない。だってこの日のために用意して、待っていてくれたのでしょう? その人は」

 想いを伝えるために一年。
 たった一日のために、一年をかけて準備をする。


 そんな手間のかかったことをする人とは、性があわないに決まっている。
 私はせっかちだから。


「――それで、たかだかミスルトゥを返すためにミュロンドにやてきたのか? しかし残念だな。君が風情のかけらもないあのような戦闘集団にいるとは。君らの若きリーダーが貴族の学校を出ていると知って、せめての望みをかけたが……世間知らずの坊やだな」
「ラムザはあなたほど、横柄でもなく、傲慢でもない。知ったような口をきかないで」
「その意思表示をするために、<これ>を返却するのか?」
「冬至祭のミスルトゥは受け取りません。そんな簡単に私に求婚できると思わないで」
「つまり?」


 想いを伝えるために一年。
 たった一日のために、一年をかけて準備をする。


 私にはできない、その、深い気持ちにだけは答えてあげてもいい。
 なぜなら、今日は冬至祭の日だから。人々の間でささやかな贈り物が交わされる日だから。


「今日は私の誕生日なので、誕生日の贈り物として受け取ります。ありがとう、クレティアン」




posted by 夕凪 at 00:52| 小説・SS | 更新情報をチェックする

2019年09月02日

オーバル

オーランの星天停止の詠唱文が、私はかなりお気に入りで、オーラン→バルマウフラのプロポーズの言葉はこの詠唱をアレンジしたものだと妄想してます。
原文は「天球の運命をこの手に委ねよ。我は汝、汝は我なれば… 星天停止!」



・オーバル的解釈:運命をあやつる神よ、私(占星術士オーラン)にその神意を渡せ。私は貴女。貴女は私。(二人で一つの=結婚した)私たちの運命は私たちが自ら切り開く。
※二人とも結婚の火刑という暗い結末があることを既に余地してる。でもオーランは、僕がなんとかするから大丈夫だよ結婚しよう。
・という回りくどいプロポーズをして、バルマウフラは(彼の心を理解したけどドライでクールな性格なので)、「いいわよ」の一言返事。
オーランが作った二人の結婚指輪には「我は汝、汝は我。さすれば我らが時は永遠なり」というプロポーズの言葉が入ってます。という妄想……素敵じゃないですか?
・オーランなら、こういうこ洒落た遊び心のあるプロポーズをするかなと…だったらいいな。
バルマウフラの魔女の物語の最後に↑のエピソードを少し入れましたが、本当はもっと長々と書いていたのです…
posted by 夕凪 at 15:12| 妄想・語り | 更新情報をチェックする

2019年03月25日

サイト引越し作業中です



旧サイト→http://haikaji.web.fc2.com/
新サイト→http://vent-dest.com/

旧サイトの小説を、新サイトにぼちぼち移動中です。
イラストはたぶん、持っていかない予定です、、、

相変わらずのろのろ動いていますが、どうぞよろしくお願いいたします。
posted by 夕凪 at 16:31| 雑記 | 更新情報をチェックする

名前元ネタさがし

ウィーグラフのイメージは「ベイオウーフ」の英雄ウィーイラーフそのまま。古代の神話ではウィーグラフは英雄の中の英雄なのです。時は移り中世になり教会の禁欲精神が支配的になると古代の英雄たちは追放されていきました。
古代の英雄の名前を冠したウィーグラフが、教会の権力の中で腐っていくのは、なんとも感慨深いものがありますね……生きる時代が違えばウィーグラフはウィーイラーフの如く英雄になれたであろうに……しみじみ

神殿騎士の名前にはアーサー王関連のものが多くて組織の同質性を感じて萌えます(←ニッチな萌え)。「ベーオウーフ」由来のウィーグラフだけ毛色が違うのですよね…そこが途中介入で13番目の使徒設定のよいところ

FFT没案だとゴラグロスも神殿騎士だったらしいのですが、彼の名前を見てるとよくわかる気がします。ゴラグロスはガウェインと戦った領主。ラヴェインはランスロットに恋したシャーロットの姫のお兄さん。つまりFFTのゴラグロスは爆死戦士にしては豪華な名前を持っているのです
ゴラグロスが円卓の騎士の名前を持ってると思うと、華やかな気分になりませんか??由来的にクレティアンと同郷のよしみだと思うと…萌え

FFT初期案だとベオルブ家はベオウルフ家になってたので
北天騎士→ベーオウーフ(アングロサクソン)派
南天騎士→シャルルマーニュ大帝のパラディン派(ロランの歌とか)
神殿騎士→クレチアン他による円卓の騎士派
…という綺麗な勢力図が
※モンスターは神話(オリュンポスの国)の住人

・クレティアン→中世の詩人(フランス)。アーサー王伝承の祖。不倫が書けずに筆を折った。
・ヴォルマルフ(ヴォルフラム)→中世の詩人(ドイツ)。クレティアンの未完の詩を引き継いだ。博識。
・アルフレド(テニスン)→没神殿騎士の人。近代の詩人(イギリス)。国王牧歌で円卓の騎士を描く。文体綺麗。
・ギュスタヴ→初期設定で神殿騎士だった。ギュスターヴ・ドレは画家でアルフレッド・テニスンの国王牧歌の挿絵他
・リュネット→没神殿騎士。クレティアンの獅子の騎士に出てくるローディーヌ姫の侍女。
・ゴラグロス→円卓の騎士ガウェインと戦う城主。
・ラヴェイン→円卓の騎士ランスロットに恋するシャーロットの姫の兄。立派な騎士。
・イズルード(イゾルデ)→姫。白い手と金髪の二人いる。円卓の騎士トリスタンとロマンスに。
・バロミディス→没神殿騎士。パロミディス卿はトリスタンのライバル兼マブ
・メリアドール→エルモディーヌ姫のために戦う。地味。円卓の騎士だったかもしれない
※バルクは旧約聖書のエレミヤ(英名ジェレミー)の従者兼書記官。主人が穴に落ちた時に助けた。文才ある知識人。
※ウィーグラフはベイオウーフ王を看取ってドラゴンを倒した英雄。演説じょうず。

ローファルとカルデュイノ(没神殿騎士)の出自は分からず。あとはティンジェルがティンタジェル城繋がりだといいなと。
この辺の名前ネタと絡めると神殿騎士団の人間関係がカオスで楽しい\(^o^)/とりあえずクレティアンは誰とでも絡める中心人物(彼がいないと円卓の騎士が生まれなかったので…)

パラディン組の余談ですが、オルランドゥとオーランは同じ名前です。なので彼らが親子なのも納得なのです。そして私は円卓の騎士よりパラディン派です。リナルド、ブラダマンテ、ロジェロ推し。

イズルードもメリアドールも名前がとても綺麗だと思います。ティンジェルという響きが最高に素敵ですよ…すき……すき…
北米版だとイズルードはIsiludになってるんですよね。読みはそのままイズルードだと思うけど、お洒落な綴りで私は北米版のお名前が好きです。北米版、ティータがティートラに変わってたり、ローファルがロフレイになってたりマイナーチェンジがあって見てて面白いです。
ローファル(ロフレイ)、クレティアンに合わせてフランス風に読むとロフロワになるのですが、いい響きですよね…普段呼ばない名前で呼ぶと不思議な新鮮みがあって楽しいです。
posted by 夕凪 at 16:20| 考察 | 更新情報をチェックする

2019年03月19日

アサシン姉妹my設定メモ

【アサシン姉妹メモ】※my設定です
◆レディ・アデレード(人間)→伯爵家のご令嬢。侯爵より位は上。年齢も上。おっとりしてる心優しいお嬢さん。自分より身分の高いお嬢様の名前を呼ぶのは…というメスドラーマ若様の意向でレディ呼びに。ブロンドの髪。
◆セリシア(人間)→レディ・アデレードのお付きの侍女。アデレードお嬢様より年上。お嬢様のお目付け役でもあるので性格はしっかりめ。伯爵家のお嬢様が(下の階級の)侯爵家の若様と付き合ってるのが気に入らない。本心は大事な大事なお嬢様を男にとられたくない百合心。お嬢様大好き。セリシアもブロンド髪。実はお嬢様の腹違いの姉妹(なので二人とも瓜二つの外見)

◆レディ(眷属)→セリア(眷属)のことをお姉さまと呼ぶ。末っ子(ちょい天然)ポジション。悪魔だけど、人間の暮らしに興味津々。セリアをお姉さまと呼ぶのは人間の時に姉妹だった無意識の名残。
◆セリア(眷属)→自分の出自が悪魔であることをわきまえている。主(死天使ザルエラ)のために血を集める有能なアサシン。同僚のレディが人間の暮らしに惹かれているのでよくお説教してる。レディに口うるさいのは人間だった頃にお嬢様のお目付け役だった時にの無意識の名残。

眷属のセリアとレディを呼び出したのは侯爵の形をしたザルエラ。すり込みでセリア&レディは「主だいすき!」でめちゃくちゃ懐いてて、主に手を出す者は地獄に落ちろ!と息の根を止める優秀な護衛。
眷属の姉妹を呼んだのはザルエラだけど、ザルエラが侯爵の姿をしてて姉妹も人間の姿をしているので自己混同がおきて、眷属の二人がメスドラーマ様に主従を超えた何かを感じてたり、ザルエラがメスドラーマ様の記憶と混ざって眷属の二人に、お嬢様姉妹の姿を重ねてしまったり

レディという名前は「レディ・○○」の略だったのかなとずっと思ってて、侯爵様にレディって呼ばれるんだから王族か公爵だろうという推測で公爵家のご令嬢設定。なのでレディは高貴な女性というイメージなのです。アデレード(アーデルハイト)という名前の意味はそのまま「高貴な姿」という意味です。あとアデレードの略称がレディになるというダブルネーミング。

私がアサシン「姉妹」とつい呼んでしまうのは、こういう脳内設定が花開いてしまってる結果です。本編だと謎な二人だったので、ついついつい設定を盛りたくなっちゃうんです

※おまけ※
ハシュマリムとザルエラでうちの眷属が有能親馬鹿トークバトルしててほしいです。アサシン姉妹もローファルクレティアンを見て、「ハシュマリム様は人間を眷属にしてるし子育てもしてるって変なの〜」「私たちの方がいっぱい血を集めてるわよ」ってガールズトークしてほしい。
ハシュマリムとザルエラはマブです。仲良し。でもアサシン姉妹と神殿騎士コンビはめちゃくちゃ相性悪そうで、顔を合わせたら口喧嘩が勃発する(一応同族なので殺し合いはしないけど、競合排除的な抗争はおきる)
posted by 夕凪 at 22:33| 考察 | 更新情報をチェックする